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2005年11月21日号 [文科省初中局メルマガ]

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□ 初中教育ニュース      文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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2005.11.21
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□□□ 報道された「国庫負担減へ新制度」の問題 □□□

          前川喜平〔(まえかわ・きへい)初等中等教育企画課長〕

 11月20日(日)東京新聞その他に「義務教育費、国庫負担減へ新制度」
との記事が掲載されている。
 「義務教育費国庫負担制度について、8500億円の税源移譲を実現するた
め、政府が現行2兆5000億円の負担金を見直し、1兆7000億円に縮小
する新たな国庫負担制度の創設を検討」というものだ。また、国庫負担の対象
経費を、教職員給与ではなく、(1)義務教育の無償制、(2)教員の質、(
3)国家的教育課題への対応、に変更し、公立高校の授業料などを参考に1兆
7000億円と算定するという。

 この検討案について、二点述べておきたい。

 第一に、この案は“文部科学省が検討しているものではない”。
 報道の案は、義務教育費国庫負担金の削減を前提としているとともに、中教
審答申の内容とも全く異なる。「中教審において結論を得る」とされた昨年11
月の政府・与党合意を無視した内容なのである。
 義務教育制度を所管する文部科学省のほかに、そのような案を検討している
「政府」とは一体どこなのか。

 第二に、義務教育費国庫負担金に関して、これまでに「検討案」と称するも
のがいくつか報道されているが、今回のものはこれまでの案にもまして“理念
も原則もない支離滅裂な案”である。単に8500億円の削減を行うためにつ
じつま合わせをしたものとしか思えない。
 無償である義務教育に授業料という発想を持ち込むとは、どういうことか分
からないが、例えば、公立高校の教育費に対する授業料収入の割合を、義務教
育費の積算に反映させるようなものならば荒唐無稽の極みである。高校では受
益者負担の原理が働いており、その授業料をいくらに設定するかは、各設置者
が決めている。一方、義務教育は憲法の要請に基づいて無償で行うものであり、
高校を参考にしながら、義務教育段階の授業料相当額を積算するなどナンセン
スである。(例えば、ある県で高校の授業料を上げると、それに応じて、その
県への国庫負担金額も増えるのだろうか?)
 また、報道によると、新制度は「図書購入や学校施設改善など、弾力的な運
用を可能にする」というが、この案の作成者は、耳あたりのよいことを言って
いるだけで、義務教育費国庫負担制度の本質を理解していない。
 中教審答申が明言したとおり「教育の成否は、資質能力を備えた教職員を確
実に確保」することにかかっている。だからこそ、義務教育費国庫負担制度は、
国が義務教育の教職員給与費の1/2を負担することで、「国と地方の負担に
より義務教育の教職員給与費の全額」を保障しているのだ。その国庫負担金が
教職員給与費以外に使えるようになれば、給与費の総額保障機能を失うととも
に、それ以外の教育費への流用が進み、結果として義務教育費の総額削減と教
育水準の低下は避けられない。現在、総額8兆7000億円かかっている義務
教育費が1兆7000億円のレベルまで止めどなく縮減していくことになるだ
ろう。
 教材費や図書費などは、実際の措置状況が基準財政需要額の水準を下回って
いたり、大きな地域間格差が生じていたりする。教材費などは地方財政措置の
対象であるが、地方における支出義務が課されていないために、十分な予算措
置がされていないのだ。この問題の解決のためには、漠然と国庫負担の対象を
広げるのではなく、教材費なども、教職員人件費と別に、必要な総額を積算し
た上で、むしろ国庫負担の対象にすべきなのである。

 以上により、今回報道された案では、国が義務教育費の財源保障の責任を果
たすことは不可能であり、政策的な評価に値しないと言える。文部科学省とし
て到底認められないものであり、国民の理解も得られないと断言する。

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                         臨時増刊号2005.11.21
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