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地方六団体の緊急声明について

第41回の義務教育特別部会での藤田委員提出資料です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05102101/009.pdf

1.地方六団体「中央教育審議会の答申素案に対する緊急声明」(平成17年10月12日)について
 10月16日に郵送配達された地方六団体の標記「緊急声明」は、中教審・義務教育特別部会(以下、本部会)の地方六団体選出委員の意見でもあり、同委員も了解されているものと考え、その声明内容について一言申し上げたい。
 同「緊急声明」の内容は、これまでの本部会での審議内容と意見分布を無視した、独断的で一方的な主張であり、特に以下の諸点で問題が多いと言わざるをえない。
(1)(中央教育審議会は不公正運営)の項及びその主張について
 この項のような主張を通そうとすることこそ、横暴であり、審議の公平性を脅かそうとするものである。
(2)(全国一律の教育か、地方の創意工夫を活かした多様な教育か)及び(全国一律に実施されたために全国一斉に問題を起こした「ゆとり教育」)の項及びその主張について
 この二つの項のリード文とその主張、その対比の仕方は、教育・教育行政の実態やこの間の改革・改善の動向を無視し、改革課題を過度に単純化するものであり、ためにする議論以外のなにものでもない。
(3)(教育の分権化が必要不可欠)の項の主張とその根拠について
 この項の主張、特に下記の2点は、これまでの本部会での論議及びそこで根拠として示された全国の自治体、首長、教育長や教育関係諸団体の意見・意向を無視するものである。
 ・「教育の分権化を進めるには、権限と税財源をセットで委譲することが不可欠である。」という主張については、本部会での多くの委員の意見や、文部科学省に寄せられた全国の自治体からの意見や「日本の教育を考える10人委員会」の首長・教育長に対するアンケート調査が明らかにした意見分布などを無視している。
 ・「税源委譲によって、・・・地方はさらに強い当事者意識を持って教育を行うことになる。・・・教員の給与を地域住民が負担することで、今まで以上に教育への関心が高まり、学校現場と地域の意識改革につながる。」という主張の根拠に、合理性・説得性がないことは、これまでの本部会の審議で繰り返し指摘されてきたことである。
(4)(地方の教育力を活かすべき)の項の主張とその根拠について
 この項の主張についても、これまでの本部会での審議において、繰り返し、その主張の非妥当性・不適切性と問題性が指摘されてきたところであり、その審議内容を無視するものである。
 ・第一段落の「地方不信に基づく言われなき批判である」との主張が地方六団体より繰り返し表明されたことは事実であるが、ことは、自治体間格差を含めて地方の財政事情が将来的にどのように推移するかの見通しに関わる問題であって、地方を信頼するかどうかといった問題ではない。
 ・第二段落の「少人数学級の導入」等の地方における近年の取り組みは、現行制度(義務教育費国庫負担制度と総額裁量制)、及び財源以外の規制緩和や地方分権化によって進められているものであり、義務教育費国庫負担金の廃止・一般財源化の根拠になりうるものではない。
 ・第三段落の「義務教育費国庫負担金の税源委譲はまさに(三位一体の)改革の重要部分である」という主張は、地方六団体の当初からの主張であるが、そのことは、いみじくも、地方六団体の主要関心が、「三位一体の改革」「国から地方への」改革の推進にあり、義務教育の改善・充実や教育行政における地方分権改革の適切な推進は二義的な問題でしかないこと、言い換えれば、義務教育費国庫負担金を「三位一体の改革」のスケープゴート・人身御供にしようとしていることを示している。
 なお、これまでの本部会での審議において、私を含む多くの委員が繰り返し、(1)「三位一体の改革」及び国庫補助負担金3.2兆円の税源委譲の財源候補がなぜ義務教育費国庫負担金でなければならないのか、(2)「三位一体の改革」の趣旨を重視するなら、なぜ、地方の実情に応じた効率性と裁量性の向上によりよく資するはずの他の国庫補助負担金(公共事業意費や奨励的経費)を候補にしないのか、という質問をしてきたが、その質問に対する合理的で説得力のある回答は一度もなされなかった。
 以上の諸点を踏まえ、本部会の答申案では、「義務教育の費用負担の在り方」に関する審議経過と結論・提言の内容については、基本的に同答申案の通りでよいと考える。


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