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2005年11月21日号 [文科省初中局メルマガ]

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□ 初中教育ニュース      文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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□ │臨時増刊号│
■ └─────┘
□ このメールマガジンは、幼稚園から高等学校までの初等中等教育中心  
■ に、教育改革を巡る様々な情報を迅速にお届けするため、新たに創刊
□ したものです。
2005.11.21
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□□□ 報道された「国庫負担減へ新制度」の問題 □□□

          前川喜平〔(まえかわ・きへい)初等中等教育企画課長〕

 11月20日(日)東京新聞その他に「義務教育費、国庫負担減へ新制度」
との記事が掲載されている。
 「義務教育費国庫負担制度について、8500億円の税源移譲を実現するた
め、政府が現行2兆5000億円の負担金を見直し、1兆7000億円に縮小
する新たな国庫負担制度の創設を検討」というものだ。また、国庫負担の対象
経費を、教職員給与ではなく、(1)義務教育の無償制、(2)教員の質、(
3)国家的教育課題への対応、に変更し、公立高校の授業料などを参考に1兆
7000億円と算定するという。

 この検討案について、二点述べておきたい。

 第一に、この案は“文部科学省が検討しているものではない”。
 報道の案は、義務教育費国庫負担金の削減を前提としているとともに、中教
審答申の内容とも全く異なる。「中教審において結論を得る」とされた昨年11
月の政府・与党合意を無視した内容なのである。
 義務教育制度を所管する文部科学省のほかに、そのような案を検討している
「政府」とは一体どこなのか。

 第二に、義務教育費国庫負担金に関して、これまでに「検討案」と称するも
のがいくつか報道されているが、今回のものはこれまでの案にもまして“理念
も原則もない支離滅裂な案”である。単に8500億円の削減を行うためにつ
じつま合わせをしたものとしか思えない。
 無償である義務教育に授業料という発想を持ち込むとは、どういうことか分
からないが、例えば、公立高校の教育費に対する授業料収入の割合を、義務教
育費の積算に反映させるようなものならば荒唐無稽の極みである。高校では受
益者負担の原理が働いており、その授業料をいくらに設定するかは、各設置者
が決めている。一方、義務教育は憲法の要請に基づいて無償で行うものであり、
高校を参考にしながら、義務教育段階の授業料相当額を積算するなどナンセン
スである。(例えば、ある県で高校の授業料を上げると、それに応じて、その
県への国庫負担金額も増えるのだろうか?)
 また、報道によると、新制度は「図書購入や学校施設改善など、弾力的な運
用を可能にする」というが、この案の作成者は、耳あたりのよいことを言って
いるだけで、義務教育費国庫負担制度の本質を理解していない。
 中教審答申が明言したとおり「教育の成否は、資質能力を備えた教職員を確
実に確保」することにかかっている。だからこそ、義務教育費国庫負担制度は、
国が義務教育の教職員給与費の1/2を負担することで、「国と地方の負担に
より義務教育の教職員給与費の全額」を保障しているのだ。その国庫負担金が
教職員給与費以外に使えるようになれば、給与費の総額保障機能を失うととも
に、それ以外の教育費への流用が進み、結果として義務教育費の総額削減と教
育水準の低下は避けられない。現在、総額8兆7000億円かかっている義務
教育費が1兆7000億円のレベルまで止めどなく縮減していくことになるだ
ろう。
 教材費や図書費などは、実際の措置状況が基準財政需要額の水準を下回って
いたり、大きな地域間格差が生じていたりする。教材費などは地方財政措置の
対象であるが、地方における支出義務が課されていないために、十分な予算措
置がされていないのだ。この問題の解決のためには、漠然と国庫負担の対象を
広げるのではなく、教材費なども、教職員人件費と別に、必要な総額を積算し
た上で、むしろ国庫負担の対象にすべきなのである。

 以上により、今回報道された案では、国が義務教育費の財源保障の責任を果
たすことは不可能であり、政策的な評価に値しないと言える。文部科学省とし
て到底認められないものであり、国民の理解も得られないと断言する。

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初中教育ニュース---------------文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
                         臨時増刊号2005.11.21
                  発行元 文部科学省初等中等教育局内
                      「初中教育ニュース」編集部   
                    TEL 03-5253-4111(内線2007)


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2005年11月18日号 [文科省初中局メルマガ]

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□ 初中教育ニュース      文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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2005.11.18
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□□□「高校分の地方交付税を移譲 自民党部会」の報道について □□□

                         藤原 誠〔財務課長〕                       
 本日、自由民主党の文教制度調査会・文部科学部会が「三位一体改革にふさ
わしい税源移譲改革の提案」を公表したことに関連して、一部に「高校分の地
方交付税を移譲」との見出しで報道がされているのが見られます。

 現在、義務教育費国庫負担金の扱いをめぐっての議論が進んでいますが、私
にとっては、高校の教育費についても、国庫負担制度こそないものの、重要な
関心事です。さっそく、自由民主党の提案を入手して分析しました。

 それによると、現在の地方交付税のうち、約8500億円に相当する額を地
方に税源移譲することにより、地方における地方交付税への依存度を低くし、
地方財政の自立を図ることとされています。その際、約8500億円の金額の
例示として、高校教育分相当があげられているものと思われます。

 この件に関する今後の取扱いは不明ですが、ご承知の通り、高校教育費は主
に地方税と地方交付税によってまかなわれています(そのほかに、高校には授
業料収入もあります)。今回の提案は、高校教育に係る基準財政需要額の積算
に変更を加えるものではなく、地方交付税よりも地方税の割合を増やすことで、
地方財政の自立度を高めることを目的としていると解されます。したがって、
高校の教育費確保には影響を与えないと思われます。

 この件については、本日、都道府県の教育委員会に連絡したところです。

 なお、今回の提案を受けて、急遽、過去の資料を調べた限りでも、次のよう
なものが見つかりました。ご紹介します。

(1)中教審の議論

 まず、今回の提案を受けて思い出したのが、中教審の義務教育特別部会での
議論です。
 6月19日の第21回の義務教育特別部会の議事録を読み返しました。そこ
では、横山委員が「実は、私も事務的にはかつて地方財政に関わったんですが、
かつて全国知事会の方でも、交付税を減らして地方税収を増やせというのは、
かなり強い声としてあったわけですね。今でも、多分、あるんだと思います。
だから、地方交付税という国の支出を減らして地方税収を増やせというのは、
今の時代においても、有益な議論だとは思っております」と発言されています。
 この横山委員の発言を受けて、石井委員が「それは否定しません。」とお答
えされています。
 したがって、地方交付税を税源移譲の対象にするということは、中教審でも
議論されているのです。そして、そのことについては地方六団体を代表された
委員も否定されていないのです。

 こうした中教審での議論を受けて、7月19日に義務教育特別部会がまとめ
た「審議経過報告(その2)」では、以下のとおり、地方交付税を地方への税
源移譲の対象とすべきである」との意見があります。

 ----------------------------------
 ウ 義務教育費国庫負担制度の在り方の検討に関する3つの観点
 【観点2:財源確保の確実性・予見可能性】
 b)税源移譲
  ○ これに関し、さらに以下の意見が出された。
   (略)
  ・ 法人事業税の見直しは、地方分権に逆行する。また「三位一体の改革」
   の要素の一つである地方交付税の改革も必要であり、むしろ、地方交付
   税を地方への税源移譲の対象とすべきである。
 ----------------------------------

(2)経済財政諮問会議の議論

 こうした問題は、中教審だけでなく、経済財政諮問会議でも議論されていま
した。
 平成14年5月21日の経済財政諮問会議では、片山総務大臣(当時)が
「地方財政の構造改革と税源移譲について(試案)」という資料を提出されて
おられます。そこでは「地方税財政制度改革の進め方」として「経済活性化等
に伴う税収回復、地方財政収支の改善を踏まえて、地方交付税を地方税へ振替
え」と明記されておられます。

 そして、平成15年の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」
(いわゆる骨太2003)において「地方税の充実、交付税への依存の引き下
げ」が指摘されているのです。

(3)地方分権推進委員会の議論

 さらにさかのぼると、地方分権のあり方を議論していた「地方分権推進委員
会」でも、交付税から地方税の移譲が言及されていたのを見つけました。
 平成13年に、この委員会がまとめた最終報告では、税源移譲に関しては、
国庫補助負担金だけでなく、地方交付税も減額の対象になることが言及されて
いるのです。
 ----------------------------------
 第3章 第2次分権改革の始動に向けて
     -地方税財源充実確保方策についての提言-

 I 地方税財源充実確保の基本的視点
  1 地方税源充実への取組みに関する基本的方向
  (2)歳入面での自由度を増す観点から、地方税収入の割合を高めていく
     ことは、現在の国・地方を通ずる厳しい財政状況等を踏まえた観点
     に照らしても、必ずしも地方公共団体の歳入の量自体を増やすこと
     を意味するものではない。国・地方を通じた現在の租税負担率に制
     度的変更を加えない前提で地方税源の充実を行うためには、国から
     地方への税源移譲により地方税源の充実を図っていく必要があり、
     その際には、税源移譲額に相当する国庫補助負担金や地方交付税の
     額を減額するなどにより、歳入中立を原則とすべきであると考える。
 ----------------------------------

 こうしたことから分かるように、地方交付税を地方税に移譲するということ
は、昔からの課題として、関係者の認識にあったようです。

 いずれにしても、三位一体の改革と義務教育費国庫負担金をめぐる議論は、
今後も、政府、与党内で続けられ、最終決着は11月下旬になる見込みです。
以前も申しましたが、私は、義務教育費国庫負担制度の所管課長としての職を
賭して、制度の堅持に向けて引き続き励みますので、みなさんのご支援をよろ
しくお願いいたします。 

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□ 編集後記

 昨日発売された週刊新潮(11月24日号、36ページ)でこのメルマガが
紹介されています。
 最近、「隔週の定期号より臨時増刊号の方が多いのは何故ですか」との質問
をいただきました。臨時増刊号は、今号のように、読者の方に解説した方が良
いと思われる報道が行われた時などは、随時発行しています。今後も、タイム
リーな情報提供に努めたいと思いますので、周りの知人の方などにも、どうぞ
このメルマガをご紹介ください。(み)

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初中教育ニュース---------------文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
                         臨時増刊号2005.11.18
                  発行元 文部科学省初等中等教育局内
                      「初中教育ニュース」編集部   
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2005年11月14日号 [文科省初中局メルマガ]

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□ 初中教育ニュース(仮称) 文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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2005.11.14
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・ 経済財政諮問会議に対する申し入れについて
・ 義務教育特別部会委員懇談会の開催
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  □□□ 経済財政諮問会議に対する申し入れについて□□□
 
  去る11月9日に開催された経済財政諮問会議において、民間人議員から提
  出された「総人件費改革基本方針(案)」において、地方公務員の純減目標に
  ついては、「特に人員の多い教職員については、児童生徒の減少に伴う自然減
  を上回る純減を確保するよう検討する。」又、教職員の給与については、「人
  材確保法について、廃止も含めた見直しを検討する。」ことが盛り込まれてい
  ます。
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2005/1109/agenda.html(「説明資料」2番目の資料です)

  文部科学省としては、公務員の総人件費改革という方向性は正しいものと考
えており、政府全体で推進すべきものと考えておりますが、今回の方針案では
財政論のみの視点から教職員の数の純減や給与水準の見直しに触れられており、
子どもや学校の現状、教育政策など教育的な観点が考慮されていないため、極
めて問題が多いと考えています。
 このため、11月11日、初等中等教育局藤原財務課長から経済財政諮問会
議の事務局に対して、下記のとおり申し入れを行いました。
 
(申し入れ)
○ 経済財政諮問会議における民間議員提出の総人件費改革基本方針(案)に
  おける「教職員定数」及び「人材確保法」の取り扱いについて
 1. 公立学校の教職員の定数及び給与の優遇措置については、憲法におい
    て保障されている義務教育の機会均等、教育水準の維持向上等の観点か
    ら、標準法、人材確保法において定められている。
  2. また、現下の学校教育が抱える様々な課題を克服すべく、中央教育審
    議会の答申や議論を踏まえ、これから正に教育の構造改革に取り組もう
    としているところである。
  3. にもかかわらず、学校教育の枢要な基盤である教職員の数や給与水準
    に関して、経済財政諮問会議では、公務員の総人件費削減の視点からの
    財政論のみに終始されており、学校現場の実態や必要性、教育政策を踏
    まえられていないのは遺憾である。
  4. 文部科学省としては、今後とも、義務教育の根幹を維持し、国の責任
    を引き続き堅持するとの方針の下、教育水準の維持向上を図り、義務教
    育の構造改革を進めていく考えであり、このためにも、必要な教職員や
    その給与費は、責任をもって確保していく必要があると考えている。
                     
                     平成17年11月11日(金)        
              文部科学省初等中等教育局財務課長 藤原 誠                               
  ───────────────────────────────────
  □□□義務教育特別部会委員懇談会の開催□□□
高橋道和〔義務教育改革プロジェクトチームリーダー〕

  11月11日(金)に、中教審答申とりまとめ後の三位一体改革の状況につ
いて事務局から報告するために、東京都内で中央教育審議会義務教育特別部会
の委員懇談会が開催されました。懇談会では、多くの委員から「三位一体改革
を進めるに際しては、ぜひとも中教審答申を尊重して欲しい」との意見が出さ
れたほか、上記の経済財政諮問会議の指摘に関連して、人材確保法の重要性や
教職員定数の改善の必要性について活発な意見交換が行われました。
 懇談会は正式な部会ではないため非公開で開催されましたが、配布資料、議
事概要は、近日中に文部科学省HPに掲載する予定ですので、ご覧ください。
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  □ 編集後記
 「初中教育ニュース(仮称)」は毎月第2、第4木曜日に配信させて
いただく予定です。(もちろん無料です。)次回は11月24日(木)の予定
です。
              (「初中教育ニュース(仮称)」編集部一同)
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2005年11月11日号 [文科省初中局メルマガ]

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2005.11.11
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  □□□ 9日の都道府県・指定都市教育委員会教育長会議議事概要 □□□

   11月9日(水)午後2時30分から4時50分まで、「都道府県・指定都
  市教育長会議」が開催されました。議題は、さきにとりまとめられた中央教育
  審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」と「三位一体改革をめぐる最
  近の動向」で、先週の内閣改造で就任した小坂文部科学大臣、馳文部科学副大
  臣と各都道府県・指定都市教育長の間で、活発な意見交換が行われました。
   本日の臨時増刊号では会議の概要(速報)をお知らせします。なお、この概
  要は初中局義務教育改革プロジェクトチームの責任でまとめたもので、発言さ
  れた教育長の方々の御了解はいただいておりませんので、発言者の氏名・役職
  は省略しております。

  1.小坂文部科学大臣の挨拶
  http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/kosaka/05111001.htm
 
  2.小坂文部科学大臣と出席者との意見交換(○が出席者からの意見)
  ○ 大臣から心強い発言をいただいた。これまで、現場を抱える地方は、国庫
   負担金の議論に不安を覚えてきた。地方分権を進めることは理解できるが、
   義務教育がどうあるべきかの議論なしに、最初に8500億円ありきとしか
   とらえざるを得ないような感がある。しかし、中教審が時間をかけて議論し、
   国庫負担金について答申が出された。文科省は、中教審答申に沿うよう、な
   お一層頑張っていただきたい。公立学校施設についても、アスベストの問題、
   災害時の避難施設になる学校の耐震化が進んでいない問題などがあり、一層
   の充実をお願いしたい。

  小坂文部科学大臣: 審議会答申と三位一体改革の関係につきましては、記者
   会見やいろいろな場で述べてきております。答申は、従来の議員の立場から
   この文部科学大臣の立場になり、もう一度改めて答申を読み直し、これを真
   摯に受け止めさせていただきたい。しかしながら、同時に、三位一体改革は、
   小泉内閣の改革の中核でありますから、しっかりと実現していく。こういう
   中で、8500億円という数字が先に出てきてしまっているわけであります。
   これについては、全体の三位一体改革の流れの全体の数字としては、これは
   やはり、それぞれの役割分担の中で消化していくということが必要だと思い
   ます。しかし、私ども、あくまでも憲法で保証された、そして基本法でうた
   われた国の責務をしっかり果たす必要がある。その根幹を維持していく、こ
   こは譲るつもりはありませんし、そういう中で、私はこの立場にしていただ
   いた、これまでの私の今までの経験を踏まえながら、調整能力を発揮して、
   この問題を解決していきたいと、まあこう考えています。今、具体的に申し
   上げませんが、一つ信頼していただきたい。

  ○ 地方六団体が義務教育費の一般財源化を求めている。教育長は知事から任
   命されており、正面から異を唱えるのは難しいが、この方向について、我々
   は大きな不安がある。管下の市町村教育長は、誰一人として一般財源化を求
   めていない。施設整備についても、校舎の老朽化が進む中で、予算が削減さ
   れ、必要な財源確保が困難。中教審の結論を是と考える。
    市町村への権限移譲について、理念と現実の矛盾がでないような方策を実
   施するよう我々と協議を進めていただきたい。教員の不祥事が多発している
   が、我々としても厳正な対応など思い切った措置をとりたい。教員を安定し
   てきちんと確保できるようにするためにも、中教審答申を踏まえ、格段の奮
   闘をお願いしたい。

  ○ 中教審の答申を支持したい。三位一体改革における国庫負担金の8500
   億円については、数字あわせの印象がある。一般財源化されれば、我が県の
   ような人口が少なく、税源のないところでは、従前と同額の給与費の確保が
   難しい。交付税総額が減る傾向の中で、交付税が増えるとは思えない。今の
   子供の様々な問題に対処するためには、教職員給与は維持していただきたい。

  ○ 学校開放週間に学校を訪問してみると、学級人数、指導形態、非常勤講師
   の活用など、総額裁量制のもとで、様々なフレキシブルな対応が実施されて
   おり、今後も同制度の拡充をお願いしたい。このような中で、国庫負担金が
   一般財源化されると、地方財政の厳しい中であるが、地方分権も大切だが、
   裏付けである財政を抜きに語れない。中教審は、日本の教育の最高の議論の
   場である。答申の重み、権威が踏まえられなければ、日本の教育のよりどこ
   ろが混迷を迎える。現在が本当に大事な時期と思う。

  ○ 答申のパンフレットは、地方案と中教審の結論が対比されているが、知事
   会の意見が説得力に欠けるものだとわかる。知事会での深夜に及ぶ激論が地
   方案に活かされていない。あの議論では、義務教育費の一般財源化に強く反
   対した知事がいた。それもあって、1年間の暫定措置となり、結論が中教審
   にゆだねられたと考えている。今日の大臣の話を聞いて力強く思う。中教審
   答申を尊重され、責任を持って財源確保し、財政上の不均衡が生じないよう
   要望する。

  小坂文部科学大臣: 三位一体改革の話については、それぞれのお立場からの
   ご意見に感謝する。私の認識では、今月末には方向性、結論を得るようなこ
   とをしないといけないと思う。税制、予算が迫ってきている。内閣・政党の
   意見を聞きながら、私の意見をとりまとめ、段取りを進めていく。日本の教
   育をどうするか、教育のあり方が日本のあり方を決めていくものであると国
   民は危機感を持っている。皆様の意見を尊重し参考にしていきたい。
    教育長の考え方や行動や大きな影響を持つと思う。教育委員会のあり方も
   議論されているところだが、教育の発展にご尽力をお願いしたい。

  (小坂文部科学大臣は、公務のため退席)

  3.馳文部科学副大臣の挨拶

  馳文部科学副大臣: 小坂大臣とは、国会の議院運営委員会、国会対策委員会
   で3年間お仕えし、筋を通すためプロセスを大事にした上で政治的決断をさ
   れることはよく知っている。今日の大臣の言葉は大きいと思う。大臣の下で、
   関係各方面の意見を聞きながら頑張っていきたい。
    先ほどのご意見が今日の場の皆さんの立場をよく表していると思う。昨年
   の地方案の取りまとめに大きく関わられた知事の下におられる教育長は、い
   ろいろご苦労があったと思うが、教育長がどのように知事と調整や意見交換
   されてきたのたか、といったことについても是非率直にお伺いしたい。

  4.銭谷初等中等教育局長からの行政説明(略)

  5.馳文部科学副大臣と出席者との意見交換(○が出席者からの意見)

  ○ さきほど大臣直々の言葉を心強く思う。地方が実情にあった教育を進める
   必要性が高まる中、財源保障の必要性も高まっている。市町村合併が進む中、
   しがらみを乗り越え新しい教育を構築しているところ。そういう中で、行政
   そのものが財源の不安を抱えていては、新しい教育づくりに支障をきたす。
   地域の財政力に教育が左右されるなら、地域住民の理解が得られなくなる。
   義務教育の水準を全国的に確保するため、十分な議論が必要で、必要な財源
   確保をお願いしてきた。文部科学省もこの答申を重く受けて止め頑張っても
   らい、我々に安心を届けてほしい。

  ○ 義務教育費国庫負担金の堅持を当初よりお願いしてきた。最近も、国庫負
   担堅持を求める県民大会に2,000人が参加し、知事も出席した。2点申
   し上げる。1点目は、私が会った国会議員は、地方六団体は一般財源化とい
   うが、個別の首長さんは国庫負担堅持の意見が多く、本音の議論を進めてほ
   しいと言っていた。もう1点は、人事権の移譲について、理念と現実という
   ことで、今でも都市部への一極集中が強く、県内全域の人事をまわすのに苦
   労している中で、人事権を市町村に移譲して本当に均質な採用・異動ができ
   るか心配。教員は都会も郡部も経験して成長する。現実問題としてよいのか
   と考えている。

  ○ 教育長としては、結論にかかわらず、教育委員会として子供のための財源
   確保について要望をしてきた。総額裁量制が大きな転機となり、我が県も恩
   恵を受けた。養護との一元化など総額裁量制の一層の充実に努めていただき
   たい。
    地方の実情をよく知っていただきたい。学校の安全対策について、学校の
   施錠を求める通達があったが、田舎なので対応できない部分もある。選択肢
   の中での一つの方策として示してもらいたい。人事権の移譲について、都市
   部に一極集中の傾向があり、フレキシブルに対応できるようしていただきた
   い。

  ○ これまでの議論において、大きな時代認識が欠けているように感じる。こ
   れからは、地方ではなく地域の時代。横並びでなく、評価や個性が重要。共
   生の時代である。人事権の移譲に関連して、答申では、政令市と都道府県の
   関係が十分示されていない。分権改革の中で、給与と人事権が不一致なのは
   誰がみてもおかしい。大きな将来を見据えた、いい決着をしてほしい。厚労
   省が障害者支援の事務を政令市から県へ移管したことに不信を持っている。
   日本の子供たちの視点に立って、現場主義で、国にきちんとものを言ってい
   きたい。

  ○ 政令市の給与負担と人事権の話は、既にこれまでの閣議決定等で一定の方
   向性が示されているため、答申では触れられていないものと理解している。
   義務教育国庫負担金については、答申に沿って対応いただきたい。義務教育
   において、小学校と中学校の連携が進む中、中学校分の一般財源化は不合理。
   また、自治体において教育予算が削減されている現状があり、本市でも減少
   傾向。本市でも教員の研修旅費が十分もらえていない。地方財政が厳しい中、
   根幹の人件費についてしっかりした財源がなくなると、人件費の削減は火を
   見るより明らかと思う。現行の制度でも分権できるところはまだまだある。
   1/2の負担率の国庫負担制度を維持しながら分権を進めるというこの中教
   審答申を実現していただきたい。

  ○ 本県知事は教育に理解がある。旅費が一般財源化された後も、十分予算措
   置してくれている。事あるごとに、知事に教育について説明をしている。国
   が決断をしていただき、それに基づき、我々も安心して教育を行ってまいり
   たい。

  ○ 知事とは、度々教育について話し合ってきた。知事は教育に関心が高く、
   アンビシャス運動にも取り組まれている。私からは、国庫負担制度の役割・
   意義についてご説明し、ご理解もいただいている。我が県らしい個性ある多
   様な教育を展開したいという思いは同じである。地方の創意工夫を活かした
   教育の実現のため、財源については、税源移譲し、足らないところは交付税
   で措置をするというのは、議論の前提条件である。教育の質の向上のため、
   知事は、必要な定数・予算は心配するなと言っている。義務教育は国の根幹
   であり、国としての検討の中でしっかりした結論を出していただけることを
   期待している。

  ○ 私個人の考えでは、国庫負担制度は教育の機会均等、水準の維持向上に役
   割を果たしてきたと認識しており、知事も十分研究している。ただ、いつま
   でも今のままの形でよいか、考えることも重要。今後の教育行政を考えたと
   き、分権を進め地方の実情にあわせていくという方向性は皆認めていると思
   う。そのための財源については、税源の確保がポイント。一般財源化後に税
   源移譲と交付税での補填が行われるという前提条件であれば、一般財源化の
   方が地方の自由度が高まるというのが一つの方向性かと思う。この前提条件
   を信じるかどうかについて(コメントするのは)なかなか苦しいところであ
   り、これ以上のコメントは控えたい。

  馳文部科学副大臣: 学級編制権限の市町村への移譲や学校教育の質の評価に
   ついてもご意見を伺いたい。

  ○ 国庫負担制度は教育の水準確保に役割を果たしてきており、運用面での改
   善は必要。政令市では、人事権者と給与負担者が違っていることから、例え
   ば市独自の旅費も組めない。人事権を小さな市町村まで移譲すると、町のエ
   ゴが出てきて、教育が成り立たなくなるのではないか危惧している。学級編
   制でも、現状では20人学級を実現しようとしても、特区でなければ市で教
   員を採用できず、運用面の弾力化をお願いしたい。教育に金を惜しむ首長は
   いないという意見があるが、国庫負担金はあって困るものではない。自治体
   はそれ以上出費すればよい。国は最低基準を確保して、それ以上は各地域で
   どうぞ、という形に改善してほしい。政令市が給与負担を行うなら準備が必
   要であり、どうなるのか気がかり。

  ○ 教育長は知事の任命であり、心理的に追い込まれる。知事も立場があり、
   私から正面から異を唱えることは難しい。ただ、知事も、義務教育を大事に
   してほしい、きちんとしてほしいと言っていた。知事と教育長である私との
   意見の違いの溝を埋める努力をしてきた。
    人事権移譲について、地区の教育長会議としてストップをかける意図はな
   いが、指導主事すら置かない自治体がある中で、都市部の県と離島・へき地
   を抱える県と考え方が違うということ。

  ○ 様々な機会を通じて、知事と話をし、意見が一致するところ、しないとこ
   ろもある。人事権の移譲を示した中教審の方向性を評価したい。

  ○ 人事権と給与負担者は一致させるべき。そうすると自由度一層が高まる。
   教育費の財源確保の方策は、歴史的観点から議論を尽くしてほしい。

  藤原財務課長: 国庫負担制度の維持を謳った答申や本日の多くの教育長のご
   意見に意を強くしている。私としては、国庫負担制度の維持に向けて頑張っ
   ているところ。総額裁量制の一層の改善について、使い勝手がよくなるよう
   改革を検討している。三位一体改革は交付税改革も含まれており、交付税総
   額が減らされる。この中で、どのように財源確保していくのか、教育費の総
   額確保について、教育長の皆様にもご尽力いただきたい。

  前川初等中等教育企画課長:地域の裁量権拡大はごもっともであり、答申もそ
   の方向性。人事権も単におろすだけでなく、学校評価や保護者・住民参加を
   進めていく。人事権移譲については、広域人事のメリットを生かしながら、
   都道府県教育委員会とも十分協議をしながら慎重に進めてまいりたい。政令
   指定都市が給与負担をすることは、閣議決定で方向性が出ているが、地方財
   政と直結する問題でもあり、皆様のご意見を伺いながら検討してまいりたい。

  6.銭谷初等中等教育局長から御礼のご挨拶

  銭谷初等中等教育局長:本日大変お忙しい中お集まりいただき、貴重な意見を
   賜りありがとうございました。中央教育審議会では100時間を超える時間
   を費やし、鳥居会長を始め委員に熱心にご審議をいただき、これからの教育
   の方向について取りまとめていただきました。文部科学省としては、この答
   申を真摯に受け止め、努力していかなければならないと思っております。答
   申の内容は、直ちに実施すべきもの、制度化にさらに検討を要するもの、中
   長期的な課題など様々です。学校を国・都道府県・市町村が支えていく中で、
   それぞれの役割の明確化、相互の協力の一層の推進が求められております。
   教育長の皆様と連絡を密にしながら、施策の誤りなきよう期してまいります。
                                 (終了)
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  □ 編集後記
 「初中教育ニュース(仮称)」は毎月第2、第4木曜日に配信させて
いただく予定です。(もちろん無料です。)次回は11月24日(木)の予定
です。
              (「初中教育ニュース(仮称)」編集部一同)
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初中教育ニュース(仮称)-------文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
                              臨時増刊号
              発行元 文部科学省初等中等教育局内
                  「初中教育ニュース(仮称)」編集部   
                    TEL 03-5253-4111(内線2007)


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2005年11月10日号 [文科省初中局メルマガ]

(義務教育費関連のみ)

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□ 初中教育ニュース(仮称) 文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
■ ┌───────┐
□ │ 第 3 号 │
■ └───────┘
□ このメールマガジンは、幼稚園から高等学校までの初等中等教育中心  
■ に、教育改革を巡る様々な情報を迅速にお届けするため、新たに創刊
□ したものです。
2005.11.10
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□ 9日の都道府県・指定都市教育委員会教育長会議について
      三木 忠一〔義務教育改革プロジェクトチーム〕

 11月9日(水)14時30分から16時50分まで、平成17年度都道府県・指定都市教育委員会教育長会議が開催されました。公務ご多忙の中、ご出席いただきました皆様に感謝申し上げます。会議には、小坂文部科学大臣、馳文部科学副大臣も出席しました。冒頭、小坂文部科学大臣の挨拶の後、数名の教育長と大臣との意見交換が行われました。その後、馳文部科学副大臣の挨拶に引き続き、銭谷初等中等教育局長から、去る10月26日に出された中央教育審議会の答申の内容や三位一体の改革の動向について説明し、これに関して、出席された教育長等からご意見をいただきました。発言された方々の多くは、三位一体の改革における義務教育費国庫負担制度や公立学校施設整備費負担金・補助金について、中央教育審議会の答申で示された方向性を支持する旨の意見を表明されました。また、義務教育段階の公立学校教職員の人事権を市町村に移譲することについて、県内全域にわたる教員の適正配置の観点からの検討の必要性や、政令指定都市による義務教育段階の公立学校の教職員の給与負担の必要性などについて意見が出されました。文部科学大臣の挨拶文は文部科学省のホームページに掲載しておりますのでご覧ください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/kosaka/05111001.htm

 なお、この会議における小坂文部科学大臣の発言について、「義務教育費削減やむを得ず。方針転換。」などとの報道が一部にありますが、大臣の発言の趣旨は、「この問題は国民の関心も高いため、拙速を避け、丁寧に議論し、広く国民の理解が得られるよう進めていく必要がある」という大臣就任以来の方針を改めて説明したものであり、文部科学省としては、義務教育の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するというこれまでの方針どおり、国民の理解が得られる決着を目指し、更に努力を重ねていきたいと考えていますので、読者の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/kosaka/05111002.htm
───────────────────────────────────

□ コラム:まえかわの「ま、え~か」 

 義務教育費はなぜ国庫負担すべきなのか、経済学的な観点から考えてみたい。
 義務教育を人的資本形成としてみた場合、その効果は教育を受けた個人にとどまらず、社会資本形成として社会全体に及ぶ外部経済性を持っている。それは民主的・平和的な国家を形成する主権者の育成であり、市場経済の行動主体となる消費者・生産者の育成であり、過去の文化遺産を未来に継承し発展させる文化の担い手の育成である。その外部経済性が極めて大きいことが義務教育の特徴であり、無償制(受益者負担によらないこと)が正当化される根拠でもある。そして、その外部経済効果は、義務教育を行う市町村や都道府県という特定の地域に限定されず、国民経済の全体に及ぶ。我が国の急速な工業化や経済成長が、農村部で義務教育を受けた人材が大量に都市部へ移動することによってもたらされたという事実は、義務教育の外部経済性の国家的広範性を示す証しである。
 義務教育に対する国による財源保障の必要性は、この外部経済効果の国家的広範性で説明することができる。ある町が、その町の中で享受される社会的利益即ち外部経済性のみに対応して義務教育に対する財政負担の水準を決定してしまうと、その町の外に生じる広範な利益を考慮しないために、その負担水準は国民経済全体の利益に比して過少なものになってしまうであろう。「受益と負担の対応」は国・地方を通じた財政構造改革の原則であるが、義務教育のように国家的広範性のある外部経済効果を持つ公的サービスにおいて受益と負担を対応させるためには、望ましい負担水準を地方レベルではなく、国家レベルで決定する必要がある。そこに国庫負担の必要性の根拠を見出すことができるであろう。
        前川喜平〔(まえかわ・きへい)初等中等教育企画課長〕


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2005年11月02日号 [文科省初中局メルマガ]

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□ 初中教育ニュース(仮称) 文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
■ ┌─────┐
□ │臨時増刊号│
■ └─────┘
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□ したものです。
2005.11.2
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□□□ 新聞報道からみる中央教育審議会答申 □□□

 10月26日に中教審答申が出されてから1週間が経ち、新聞各紙では答申が社説や解説で取り上げられる一方、今後の観測記事、中教審会長インタビューや委員の寄稿など、さまざまな報道が行われています。中には明らかな誤報もありましたが・・・。このあたりで一度、これまでの報道を振り返っておきたいと思います。
 なお、以下の記述は、原則として、朝日・読売・毎日・日経・産経・東京の6紙の東京本社版を対象としており、地域によって、日付・朝夕刊の別・ページが異なる場合がありますので御了承ください。

□ 社説
 答申について社説を掲げたのは、11月2日現在、朝日・読売の2紙です。
 朝日(10月28日・朝刊3面)は「中教審答申 文科省の代弁者なのか」を見出しに掲げ、「以前は都道府県の教育長任命には大臣承認が必要で、国の方針を地方が丸のみせざるをえなかった」「国は教える内容や教科ごとの授業時間数も全国一律で決め、それを後ろで支えてきたのが国庫負担制度である」「98年に任命承認を廃止してから地方の教育が息を吹き返し始めた」「自治体や学校が当事者として取り組める環境を整えることが中教審の使命ではなかったか」「答申は地方への影響力を手放したくない文科省の思惑を代弁したものとしか思えない」との論旨を展開しています。
http://www.asahi.com/paper/editorial20051028.html#syasetu2
(asahi.comへリンクしています)
 都道府県教育長の任命承認廃止によって市町村立学校の教育が息を吹き返したというのは、事実認識としても論理的にもはなはだ疑問です(市町村教育長に対する都道府県知事の任命承認廃止によるというのであれば、まだ論理的ですが)。また、授業時間数と国庫負担制度を関係付けるのもあまりにも飛躍しすぎでしょう。今回の答申の目玉であった、人事・学級編成権限の市町村移譲、市町村による教員採用の解禁が「自治体や学校が当事者として取り組める環境整備」と理解されていないのは、事務局としてはとにかく残念なことです。それにしても結論部分は中教審委員に対してあまりにも非礼ではないでしょうか。
 ここでは、筆者のコメントに替えて、答申案を審議した際の片山委員の発言の抜粋を紹介させていただきます。
 「文部科学省がすべてを仕切っているとの発言があった。答申案をまとめた
のはわれわれ委員である。委員の意見では、私を含めた多くの委員がまるで文部科学省の手先であるとの意味になる。それは人の名誉を著しく傷つけるものである。私は、自分の考えでものを言っている。頼まれたからものを言うとか、だれかに長々と作文をかいてもらって、そんなこと読んだのは一回もない。自分の考え方で全部やっている。委員の威信、名誉に関わる問題だ。釈明を求めたい。」(第41回義務教育特別部会議事概要12ページ。ぜひ、文科省HPで前後の発言もごらんください。)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05101901/s001.pdf
 一方、読売新聞(10月30日・朝刊3面)は、「義務教育費 中教審答申に重なる地方の声」と題して、「中教審は、教育論の見地から100時間を超える論議の末、国庫負担制度堅持の答申に至った」「税源移譲を主張した地方6団体代表から、教育格差不安を払拭する主張は最後までなかった」「現行制度を維持し、総額裁量制の改善で地方の裁量拡大に応えるのは妥当」「市町村議会の意見書や市町村長アンケートの結果をみても、制度堅持が地方・教育界の大勢」「中教審答申を無に帰すような政治判断が国民に受け入れられるだろうか」との論旨をのべています。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20051029ig90.htm
(YOMIURI ONLINEへリンクしています)
 こちらの社説は、中教審の審議や答申を丁寧に踏まえて書かれているのではないかと思います。
 ところで、読者の皆さんは、2つの社説を読み比べて、あまりの違いに驚かれるのではないでしょうか。その他の新聞も、答申案段階ですが、「中教審答申案 首相判断が一段と重くなった」(10月13日・毎日朝刊5面)、「ねじれ深めた中教審答申」(10月19日・日経朝刊2面)と様々な見出しの社説を掲げています。産経は、答申前後には社説は出していませんが、以前に「中教審 地方代表も教育論を語れ」(3月28日・朝刊2面)との主張をしています。
 地元紙・ブロック紙のシェアが高い地域では、その紙面の主張が多数意見のように思われがちですが、各紙読み比べてみていただくと、様々な考え方があることがご理解いただけると思います。

□ 解説記事、委員のインタビュー・寄稿
 筆者の個人的な印象では、この1週間は、産経、朝日が充実していたように思いますので、この2紙についてコメントします。
 産経はこれまでも月曜日毎に「中教審 採録」コーナーで、継続して審議のポイントを報じていました。総会翌日の27日には、朝刊3面、5面、29面で答申とりまとめの経緯、答申の内容・要旨などを詳細に報じたほか、30日朝刊7面では、読者からの「制度を廃止すれば教育はどうなるのか」との質問に答える形式で、「地方側は「制度廃止で予算配分や教育を自由化でき、教育が良くなる」と主張します。しかし、きちんと教育費に充てられるか。ひいては義務教育の根幹が維持できるか。この疑問が中教審の答申の根底にあります」「地方にとって義務教育費は自由に使えるといった意味では使い勝手が悪く地方分権に立つ首長でも「三位一体改革には馴染まない」と主張する人もいます」と解説しています。同じく30日朝刊29面では、中教審鳥居会長のインタビューを掲載し、国庫負担制度の変遷、多数決で決着したことへの見解、答申に負担率2分の1の維持が明記されることになった経緯、などに関する一問一答を掲載しています。
 一方、朝日新聞では、10月29日朝刊12面の「私の視点」欄に、第1回の特別部会で「エビデンス・ベースト」な議論を提唱した中教審委員の苅谷剛彦氏の寄稿が掲載されています。苅谷氏は「中教審は100時間以上もかけ、様々なデータをもとに専門家の判断を含めて義務教育の将来像を検討した上で、今回の答申に至った」「答申は、基本的には、国は「カネはだすが口は出さない」仕組みに変えようという提案である。それとは逆に、審議会に出た地方団体代表委員の「地方案」だと、カネは地方に渡るが、教育の分権化は進まない」「地方側の意見は、財源移譲の主張を除けば、論理が一貫しておらず、印象論に満ちた提案だった。正確な現状認識や分析を欠いており、額として収まりのよい中学校分の8500億円を移譲するという主張を取り繕うものでしかなかった」と述べています。答申のポイントを押さえるために、ぜひご一読することをお勧めします。
 30日朝刊25面では、「中教審の100時間振り返る」と題する解説記事が掲載され、「鳥取県知事の片山博委員は「全国知事会が削減する補助金リストをまとめた際、義務教育費は(優先度の低い)9番バッターという位置づけだった」と明かした。多くの委員が「そもそもなぜ義務教育費が削減対象にならなければならないのか」という疑問の声も上げた。その疑問が最後まで解消されないまま、「制度堅持」という結論に落ち着いた。」といったように、中教審での論戦をじっくりと検証しています。
 ところで、朝日新聞を購読されている方は、27日の社説と30日の解説記事のトーンがだいぶ違うなという印象をもたれたのではないでしょうか。これは、解説記事は毎回の審議を傍聴している記者が書いているのに対して、社説を執筆している論説委員は必ずしもそうではない、といったところに原因があるのではないかと思われます。実は、このような例は他紙でも見られ、例えば、10月19日の社説で「義務教育費 やはり地方移管を軸に」(朝刊5面)を打ち出した東京新聞は、翌20日には「教育の地方分権 現場には不安」(夕刊10面)という見出しで、「小さい市町村は皆、財政が苦しい。独自に財源を加えるのは難しい。義務教育の水準が保てるのか。憲法で保障されている義務教育は国で財源を持ってほしい(千葉県富里市長)」など、国庫負担金削減に対する不安が市町村の間で急速に拡がっている様子を大きく報じています。

□ 観測記事(もちろん誤報です)
 この1週間で、もっともお騒がせだったのが、朝日新聞「義務教育費 国庫負担、中学分廃止へ」(10月27日・夕刊1面)と、翌日の読売新聞「義務教育費国庫負担 小中とも1/3に削減」(10月28日・朝刊1面)です。
1面トップの7段記事というところまで共通のこの2つの記事は、メルマガ第2号で説明したように、事実無根の観測記事。文科省から両社に厳重に抗議するとともに、文科省HPでも誤報である旨を解説しています。いずれもそれぞれの社説の主張を踏まえた誤報になっているというのが印象的でした。
  
□ その他
 本日(11月2日)付け読売新聞朝刊15面の「解剖 三位一体改革」で、このメルマガがややネガティブに紹介されています。霞ヶ関発のメルマガがあまたある中で、創刊したばかりの本メルマガを宣伝いただくのは大変ありがたいのですが、記事の読み方によっては、このメルマガで「自治体に圧力をかけている」「市町村が負担金存続の意見書を出すよう要請している」と誤解されかねません。
 継続してお読みいただいている読者の方はご理解いただけると思いますが、このメルマガは教育改革をめぐる様々な情報を迅速にお届けするために創刊されたものであり、自治体に圧力をかけるような意図は全くありません。また、文科省として、各市町村に対し、意見書提出を要請している事実もありませんので、誤解のないようお願いいたします。
 読者の中には、都道府県・市町村関係の方も大勢いらっしゃると思います。これまでお送りした記事内容についても、賛否を含め、さまざまな御意見があると思いますので、編集部へ遠慮なく皆様の声をお寄せください。それらの声も、折々ご紹介させていただきたいと思います。
   
★ご意見はこちら sy-mel@mext.go.jp  

            高橋道和〔義務教育改革プロジェクトリーダー〕
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  □ 編集後記
 一昨日の内閣改造で、中山成彬前文部科学大臣に替わって小坂憲次文部科学大臣が就任いたしました。直後の記者会見では、「中教審答申を真摯に受け止めるべきである。一方、三位一体改革を確実に実施する必要がある。いずれにせよ、拙速を避け、丁寧な議論を尽くし広く国民の理解が得られるよう進めていく必要がある」と述べています。
 答申を契機に、インターネット上でも義務教育費国庫負担制度について、活発な議論が進行中です。次のブログは、関連資料がきれいに整理されていましたので、国庫負担制度の行方に興味のある方は参考にしてください。
  http://blog.so-net.ne.jp/gimukyoikuhi/
 
 初中教育ニュース(仮称)は、毎月第2、第4木曜日に送信させていただく予定です。(もちろん無料です。)次回は11月10日(木)の予定です。

                (「初中教育ニュース(仮称)」編集部一同)
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初中教育ニュース(仮称)-------文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
                        臨時増刊号2005.11.2
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2005年11月01日号 [文科省初中局メルマガ]

文科省のメルマガ臨時増刊号が公開されています。
義務教育費関連のみ紹介します。

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□ 初中教育ニュース(仮称) 文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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□ │臨時増刊号│
■ └─────┘
□ このメールマガジンは、幼稚園から高等学校までの初等中等教育中心  
■ に、教育改革を巡る様々な情報を迅速にお届けするため、新たに創刊
□ したものです。
2005.11.1
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□□□ インターネットでたどる中央教育審議会の議論 □□□
― 第1回「9月末の審議から答申までの流れ」―

 中教審での審議について、とりわけ義務教育費国庫負担金に関する結論に関して、様々な報道がなされていますが、その中には、残念ながら、審議の状況を正確に承知されていないものもあるようです。
 中教審の資料と議事概要はすべてインターネットで公表されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/index.htm#gijiroku
http://www.mext.go.jp/a_menu/gimukyou/index.htm
 インターネットには、毎回の審議に関する三種類の情報が掲載されています。
 ・配付資料
 ・議事概要(審議における主な発言を事務局の責任で整理したもの。発言者 の名前は明記されない。できるだけ速やかに公表される。)
 ・議事録(審議におけるすべての発言を掲載したもの。発言者の名前とともに公表される。ただし、発言者に内容をご確認いただくので、公表までに 時間がかかる。)
 これらの資料を丹念に読み込んでいくと、どのような議論がなされたかわかります。

 今回は、義務教育費国庫負担金に関する結論が、どういう経緯をたどって答申に至ったのか、その大まかな流れについて、9月30日の義務教育特別部会から10月26日の総会までの16時間分の議事概要から紹介します。委員の真摯な議論の積み重ねを通じて、答申が取りまとめられたことがご理解いただけると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.第37回の義務教育特別部会(9月30日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05100301.htm
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  ここでは、(資料6)として、鳥居部会長から「中央教育審議会義務教育特別部会の目指す義務教育改革の理念」という配布資料が示されました。これは、義務教育特別部会での議論を箇条書きで整理したもので、その後、答申の柱立てとなっていく資料です。
  このときの「議事概要」によると、部会長の資料に対する意見が出ていますが、おおむね賛成の意見が多いようです。そして、議事概要の末尾に「○費用負担の問題と分権の問題を整理した資料を次回会合で配布したいが良いか」との委員からの発言があり、それに対して「○是非お願いいたします」との返事が見られます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2.第38回の義務教育特別部会(10月3日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05100401.htm
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ここでは、(資料4)として苅谷委員から「費用負担に関する議論」という配布資料が出されました。前回の末尾の議論を受けて提出された資料です。
  まず、この資料は「○中教審に求められている検討課題は、地方案の『中学校8500億円の一般財源化』をめぐって費用負担をどうするか」という問題提起をしています。さらに「○中学校8500億円の一般財源化における合理性は何か、このことで中学校の教育がどうよくなるか(エビデンスベースで説明されたか)」、「○中学校が一般財源化されて小学校と別になることで義務教育としての整合性があるか」との疑問が呈されています。
  続けて「○市町村や学校の権限拡大と、義務教育費国庫負担金の一般財源化は別の問題ではないか」「○分権推進と、国の義務教育費確保は矛盾しないのではないか」ということが指摘されています。
 また、7月に公表された「審議経過報告(その2)」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/05072201/001.htm
でテーマになった費用負担に関する3つの論点に対する考え方が示されています。
 このときの「議事概要」によると、この苅谷委員の資料の考え方に賛成する委員はいましたが、具体的な反論をした委員はおられませんでした。唯一「○苅谷委員のペーパーについて全部反論できるが、持ち時間内では無理」という発言が見つかりますが、具体的な反論は行われていません。
 なお、この日の審議では、(資料5)として、小川委員から「総額裁量制のさらなる改革案」という配布資料が示されるとともに、(資料6)として、藤田委員から、全額国庫負担も視野に入れた「義務教育費の費用負担について」という配布資料が出されました。
 最終的な答申の費用負担に関する記述は、この日の議論が根底となって、鳥居部会長によってとりまとめられていきます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
3.第39・40回の義務教育特別部会(10月12日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05101301.htm
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  この日の審議では、(資料1)として「答申素案」が示されました。
会議には、委員から12種類の資料が配布され、委員の皆様の審議に対する真摯な思いが感じられました。
 「議事概要」によると、多様な意見がある中で、答申素案には書かれていなかった義務教育費国庫負担金の負担率を明記することを求める意見が多く見られます。一方、石井委員、増田委員、山本文男委員の連名による資料「中央教育審議会答申素案に対する意見について」が提出されて、地方六団体の主張が述べられています。
 なお、この日の審議では、負担金問題を離れて、審議会の在り方といったそもそも論まで議論になりました。「議事概要」の中に「○審議会の在り方が問われている。従来、審議会は役所の隠れ蓑と言われてきた。そのようであるべきではない。審議会は有識者の知識を行政に活用する場であるべき。各省間での調整はすべきではない。文部科学省においては、そのような話が持ち上がった場合は、峻拒して欲しい。説明責任を負わない外部の人間が審議に関わるという古い政治からは脱却すべき」との発言が見られるのが注目されます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
4.第41回の義務教育特別部会(10月18日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05102101.htm
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 この日の審議では(資料1)として「答申案」が示されました。
 これに対して、石井委員、増田委員、山本文男委員の連名により「中央教育審議会答申案に対する意見について」という配布資料が提出されています。当日の「議事概要」によると、その資料を皮切りに議論がなされています。地方代表委員の中には、長時間にわたって発言された委員もおられ(PDF版の「議事概要」で7ページ分)、地方の意見についても、しっかりと議論が交わされています。
 なお、地方六団体が各委員に緊急声明を送付したことを受けて、(資料2)として若月委員から「六団体緊急声明への反論」が、(追加資料)として藤田委員から「中教審・義務教育特別部会答申案への意見」が、それぞれ配付資料として提出されています。欠席された梶田委員からも、(追加資料)として「新しい時代の義務教育を創造する」の提出がありました。
 議事の最後の局面では、答申案のとりまとめに関して、時間をかけて慎重な議論がなされ、最終的に採決が行われます。これにより、義務教育特別部会としての答申案がまとめられ、総会に送られることになりました。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
5.第52回の中央教育審議会総会(10月26日)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/05102601.htm
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 この日の審議では、(資料1)として義務教育特別部会が取りまとめた「答申案」が配布されています。
 これに対して、(追加資料)として、石井委員、増田委員、山本文男委員の連名により「新しい時代の義務教育を創造する(答申)に対する意見」が提出されています。当日の「議事概要」によると、その資料を皮切りに議論がなされています。
 配布資料としては、その他に、(資料2-1)として小川委員による「義務教育特別部会における費用負担の議論を振り返って」と、(追加資料)として藤田委員による「義務教育特別部会答申案についての意見と今後の中教審での審議への希望」が提出されています。欠席した湯川委員からは(参考資料1)の資料提出がありました。
 答申案のとりまとめに関しては、特別部会同様、総会においても慎重な議論が行われ、最終的には採決を行うこととなりましたが、採決は混乱なく整然と行われ答申がまとめられました。

 この日は、鳥居会長による談話が公表されています。http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/05102601/002.htm
 あわせて、鳥居会長の記者会見もなされました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/05102601/005.htm
    
              高橋道和〔義務教育改革プロジェクトリーダー〕
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ 編集後記 
 今回の臨時増刊では、答申に至るまでの中教審審議のポイントを振り返ってみましたがいかがでしたでしょうか。読者の皆様もお忙しいこととは思いますが、今後、この答申は地方議会でも議論の対象になっていくと思いますので、お時間のある時にHPを訪れてみてください。
 なお、第2号において、「義務教育費国庫負担金に関する朝日新聞の誤報」についてお伝えしましたが、執筆後、新たな事実が判明しましたので、当記事の3、4パラグラフを以下のように差し替えさせていただきます。
 ○ この点については、細田官房長官が、27日夕方の記者会見で「まだ
  検討の緒についたばかりでございますから、方針を決めたという事実は
  ございません。」と述べられているとおりです。
 ○ 政府として決めていないことをあたかも決まったように報道するのは
  いかがなものでしょうか。

 初中教育ニュース(仮称)は、毎月第2、第4木曜日に送信させていただく予定です。(もちろん無料です。)次回は11月10日(木)の予定です。
  
              (「初中教育ニュース(仮称)」編集部一同)


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2005年10月27日号 [文科省初中局メルマガ]

文科省のメルマガ第2号が公開されています。
義務教育費関連のみ紹介します。

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□ 初中教育ニュース(仮称) 文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
■ ┌──────┐
□ │ 第 2 号 │
■ └──────┘
□ このメールマガジンは、幼稚園から高等学校までの初等中等教育中心  
■ に、教育改革を巡る様々な情報を迅速にお届けするため、新たに創刊
□ したものです。
2005.10.27
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[目次]
・ 巻頭言
・ ★★義務教育費国庫負担金に関する朝日新聞の誤報★★
・ 教育改革の動き
・ 中教審2weeks
・ トピック解説:教育改革最前線
・ お知らせ
・ コラム:まえかわの「ま、え~か」  
・ 編集後記
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□ ★★義務教育国庫負担金に関する朝日新聞の誤報★★
                           藤原 誠〔財務課長〕

○ 10月27日(木)朝日新聞夕刊(東京本社版第4版)に、「義務教育
 費国庫負担、中学分廃止へ」との記事が載りましたが、これは完全に事実
 無根です。報道をご覧になって驚かれた方もいらっしゃると思いますが、
 ご安心ください。
○ 昨日、中央教育審議会答申が出たばかりであり、本日は中山大臣が小泉
 総理大臣、官房長官に会い、「義務教育費の扱いは、国民の重大な関心事
 であり、次の内閣で丁寧に議論する」という話をしました。政府として、
 これから負担金の扱いを丁寧に議論していくということが確認されたばか
 りです。
○ 同記事(官邸の二橋副長官付きの記者である藤田氏の署名)では、「政
 府関係者」の話として「中学分廃止」を報じていますが、総理をはじめと
 する閣僚以外にこのような方針を決定できる「政府関係者」とは一体何者
 なのでしょうか。
○ また、政府として決めていないことを、裏付けもなくただの一関係者の
 話だけであたかも決まったかのように報道するマスコミも非常に疑問です。
○ 義務教育費国庫負担制度の扱いの議論は、今後も、政府、与党内で続け
 られて、最終決着は11月中下旬になる見込みです。私は、義務教育費国
 庫負担制度の所管課長としての職を賭して、制度の堅持に向けて引き続き
 励みますので、みなさんも誤報に踊らされることなく、ご支援をよろしく
 お願いいたします。                 

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□ トピック解説:教育改革最前線

  中教審答申まとまる。キーワードは「義務教育の構造改革」。
              高橋 道和〔義務教育改革プロジェクトリーダー〕

 昨日の中教審答申は、義務教育費国庫負担金の扱いのみが大きくとりあげられていますが、教育課程の見直し、教員免許更新制の導入、全国学力調査の実 施、学校評価の充実、人事権や学級編制権の市町村移譲など、義務教育全般にわたる広範な施策が盛り込まれています。これから来年にかけて、「義務教育の構造改革」が様々な場面でキーワードとなっていくことでしょう。
 このように、今回の答申はいわば義務教育の「総合答申」。担当者としても、マスコミの扱いは大いに気になるところです。既に、特別部会審議で大きく報道されたので、多少扱いは小さくなるにしても、全国紙の何紙かは1面を飾れるのではないかと期待していたのですが・・・・・。実際の本日の各紙1面は、「普天間移設」と「ロッテ優勝」に埋めつくされ、2面以降に押しやられてしまいました(残念。ちなみに、事務局スタッフの一人は大の虎ファン。第6、7戦のチケットも無駄になり、失意のどん底にあります。)。筆者は以前にも、教育基本法改正の中教審答申(平成15年3月20日)を担当し、「米軍イラク空爆開始」の大ニュースで1面トップを飛ばされた経験があります。米軍とはあまり相性が良くないのでしょうか。
  答申本文、中教審会長談話、文部科学大臣コメントはすでに文部科学省HPに掲載されています。答申をわかりやすく説明したパンフレットも掲載しましたので御活用ください。マスコミでは、中教審の審議を独自の視点から報道しますので、読者の皆様には、ぜひ「生の中教審情報」も覗いていただき、報道と比べてみていただきたいと思います。今後、できるだけ速やかに、昨日の総会における審議の概要、会長記者会見の概要なども掲載していきます。また、各紙報道に対する筆者の感想や部会・総会審議のエピソードなど、随時、このコラムや臨時増刊でお伝えしたいと思います。引き続きよろしくお願いします。

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□ コラム:まえかわの「ま、え~か」
            前川喜平〔(まえかわ・きへい)初等中等教育企画課長〕

 不倶戴天(ふぐたいてん)」という言葉がある。「倶(とも)に天を戴かず」と読み下す。この空の下でともに生きることはできない、つまりどちらかが滅びるまで戦わなければならない敵対関係という意味だ。義務教育費国庫負担金と三位一体の改革とは、今まさに不倶戴天の関係にある。
 義務教育費国庫負担金をなくして地方税を増やすと、どういう「いいこと」があるのだろうか。「地方財政の自立性確立」というのが三位一体の改革の大義名分だ。義務教育にしか使えない特定財源が、何にでも使える一般財源になるのだから、都道府県の財政の自由度は確かに高まる。財政の都合からは「いいこと」なのかもしれない。しかし、都道府県が国庫負担のレベルを超えて義務教育費を増やすことは今でもいくらでも自由にできるし、現に多くの都道府県がそうしている。だから、都道府県が手にする「自由」とは結局「義務教育費を減らす自由」でしかないのだ。
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2005年10月21日号 [文科省初中局メルマガ]

文科省のメルマガ臨時増刊号が公開されています。
義務教育費関連のみ紹介します。

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□ 初中教育ニュース(仮称) 文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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□ │臨時増刊号│
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□ このメールマガジンは、幼稚園から高等学校までの初等中等教育中心  
■ に、教育改革を巡る様々な情報を迅速にお届けするため、創刊したも
□ のです。
2005.10.21
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  □□□ 中教審義務教育特別部会、義務教育改革の答申案を決定 □□□

 義務教育の在り方について幅広く審議を重ねてきた中教審義務教育特別部会は、10月18日(火)に都内のホテルで第41回会合を開催し、答申案の審議を行いました。予定を1時間超える3時間30分の白熱した審議を経て、特別部会としての答申案が了承され、来週10月26日(水)の中教審総会に諮られることとなりました。
 文部科学省HPに、早速、「答申案」と「第41回特別部会議事概要」が掲載されましたので、是非ご覧ください。

 新しい時代の義務教育を創造する(答申)(案)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05102001/s001.pdf
 第41回特別部会議事概要http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05101901/s001.htm
 これまでの審議内容
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/index.htm

 ところで、特別部会の答申案決定に際して、地方六団体代表委員(以下「六団体委員」)3名の連名で、「中央教育審議会の不公正運営に対する抗議声明」が出されました。中教審の事務局の立場からみると、残念ながらこの声明には、事実誤認に基づく部分があると思われます。上記の「答申案」「第41回特別部会議事概要」をお読みいただければご理解いただけると思いますが、以下、簡単にご紹介します。

■ 「六団体委員の意見は、主要な点はほとんど採用されず、採りあげた場合であっても必ず反論が付されるなど、意見は全く反映されていない」との指摘について

□ 六団体委員の意見は丁寧に記述されています
 答申案第2部第4章(p33~p44)には、六団体委員の意見が、8
箇所113行にわたって記述されており、特別部会の審議で六団体委員が主張された事項は、相当部分が盛り込まれています。六団体委員の主張に対する反論も記述されていますが、実際に部会審議では多くの委員から様々な観点からの反対意見が表明されており、バランスをとる意味からも問題ないと思います。
 本当に、「六団体委員の意見は全く反映されていない」のか、実際の答
申案を読んで、読者の皆様にご判断いただきたいと思います。

■ 「採決により決定し、結果として多数決に名を借りて地方六団体の意見を排除することとしたのは、審議会の公平・公正な運営とは程遠い」との指摘について

□ 審議会は公平・公正に運営されています
 18日の特別部会では、答申案に関する審議が尽くされた後、さらに1
時間をかけて、最終的に採決を行うかどうかについて検討が行われました。
 一部の報道では、部会長が突然審議を打ち切って採決したかのようなニュアンスで報じられていますが、全くそんなことはありません。その結果、最終的には六団体委員も、採決を行うことに了承した上で、混乱なく整然と採決が行われ、賛成21名、反対2名で答申案が了承されています。もちろん、多数決は、閣議決定された中央教育審議会令に定められている議事運営上の正式なルールです。
 特別部会には、「発言は3分を目安に」という約束があります。今回は、特別部会の最終審議ということで熱が入ったのか、六団体委員の中には30分近く意見表明された方もいました。これまでの100時間を超える部会審議でも、できる限り少数意見に耳を傾けるという趣旨から、六団体委員には、発言機会、発言時間などの面で相当な配慮が行われてきたと思います。
 特別部会の審議は、すべて公開で行われていますが、これまで、地方六
団体以外から「運営が不公平」との指摘をいただいたこともありません。
 「審議会の公平・公正な運営とは程遠い」との指摘は、事実からは程遠
いのではないかと思いますが、これも読者の皆様が、これまでの議事録や議事概要を読んでご判断ください。

■ 「中教審は、審議会として意見を必ずしも一本化しなければならないものではない」との指摘について

□ 「中央教育審議会で結論を得る」との政府・与党合意の要請に応える責任があります
 答申の結論を一本化するか、両論併記とするかが、答申とりまとめの大
きな論点でした。10月3日、12日、18日の部会審議でも多くの時間がこの点に費やされ、その上で導き出された結論が今回の答申です。審議の過程では、「昨年11月の政府・与党合意では『中央教育審議会で結論を得る』とされており、両論併記では審議会に要請された責任を果たすことができない。」「どちらの意見がより論理的かを判断するべき。明らかに一方が正しければ両論併記はいけない。」「100時間を越える審議を行って結論が出せなくては、審議をした意味がない」などの意見が出され、最終的には両論併記としないことが合意されました。
 この点も、直近3回分の議事概要から明らかなことだと思われます。  
 10月26日開催予定の中教審総会の審議状況についても、速やかに情報発信していきたいと思います。引き続き、「初中教育ニュース(仮称)」をご愛読いただければ幸いです。
             高橋道和〔義務教育改革プロジェクトリーダー〕


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