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2005年12月7日号 [文科省初中局メルマガ]

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□ 初中教育ニュース      文部科学省初等中等教育局メールマガジン 
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□ │ 臨時増刊号 │
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□ このメールマガジンは、幼稚園から高等学校までの初等中等教育中心  
■ に、教育改革を巡る様々な情報を迅速にお届けするため、新たに創刊
□ したものです。
2005.12.07
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・ 三位一体についての政府・与党合意について
・ 新聞報道からみる義務教育費国庫負担金
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□□□ 三位一体についての政府・与党合意について □□□

                         藤原 誠〔財務課長〕

○ 11月30日に、「三位一体の改革」の政府・与党合意がまとめられまし
 た。義務教育費国庫負担制度の取り扱いは、次の通り決まりました。

  「義務教育制度については、その根幹を維持し、義務教育費国庫負担制度
  を堅持する。その方針の下、費用負担について、小中学校を通じて国庫負
  担の割合は三分の一とし、8,500億円程度の減額及び税源移譲を確実
  に実施する。」

○ 国庫負担制度の「堅持」が明記されました。地方六団体の「一般財源化」
 の主張が退けられ、国庫負担制度の重要性が政府・与党関係者に認識された
 のです。
  小坂文部科学大臣は、11月30日の記者会見で、今回の措置を「さらに
 削減されるようなことのない恒久的な意味合いを持つ」と述べています。ま
 た、12月2日にも「一般財源化はまったく考えられない」と述べています。
 政府・与党として、国庫負担金の廃止削減について“打ち止め宣言”したと
 言えます。

○ 地方六団体の求めた「中学校分の一般財源化」ではなく、「国と地方の負
 担により義務教育の教職員給与費の全額が保障される」ことを重視した中教
 審答申の趣旨は尊重されました。そのことは評価できると思います。ただし、
 国の負担率が1/3になるのは、私にとって、率直に言って残念です。中教
 審答申は「現行の負担率1/2の国庫負担制度」の堅持でした。国庫負担金
 8,500億円を削減し、負担率を引き下げるのは、中教審答申とは違う結
 論です。

○ 中教審で提言された「義務教育の構造改革」を進めるためにも、義務教育
 費国庫負担制度は非常に重要な役割を果たしています。私は、今回の負担率
 引き下げにより、日本の義務教育の水準確保に悪影響が生じないようにする
 とともに、国庫負担制度の充実のため再び全力で取り組む所存です。中教審
 答申のとおり、義務教育費の全額国庫負担こそあるべき姿です。地方六団体
 の「国庫負担金が地方を縛っている」などの根拠なき主張を許さず、我が国
 の義務教育を守るために、本当の「地方の声」を全国であげていこうではあ
 りませんか。
  引き続き、みなさんのご支援をお願いいたします。

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□□□ 新聞報道からみる義務教育費国庫負担金 □□□

                    榎本 剛〔財務課教育財政室長〕

 11月30日に「三位一体の改革」の政府・与党合意がまとめられました。
これについての文部科学省の考え方は、前回ご紹介した文部科学大臣談話
http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/kosaka/05113001.htm
や、さきほど紹介した藤原財務課長の文章のとおりです。
 ここでは、政府・与党合意についての新聞各紙の社説や解説記事のうち、義
務教育費国庫負担金関連について振り返っておきます。
 なお、以下の記述は、各紙の東京本社版を対象としています。地域によって、
日付・朝夕刊の別・ページが異なる場合があり得ますのでご了承ください。

 読売(12月1日・朝刊3面)の社説は「国と地方、痛み分けの税源移譲」
の見出しで、今回の措置を「小中学校合わせた教員給与に対する補助率を、1
/2から1/3に引き下げて工面することで決着した。中央教育審議会が10
月に出した答申が実質的に尊重されたと見てよい」と述べています。
 負担率を「1/3」にすることにした政府・与党合意は、「1/2の負担率
堅持」とした中教審答申とは違います。それでも、「国と地方の負担により義
務教育の教職員給与費の全額が保障される」という答申の考え方が守られたこ
とに着目して「実質的に尊重された」と解説されたのだと思われます。

 毎日(12月2日・朝刊5面)の社説は「『小泉政権後』に不安残すな」の
見出しを掲げて、地方六団体の求めた中学校分の廃止ではなく、負担率の引き
下げにより8,500億円が削減されることについて「地方の裁量に委ね、自
治体が競い合うという『教育の地方分権』論議は一体、どこへ行ってしまった
のだろう」と述べています。
 義務教育費国庫負担金を廃止することが「教育の地方分権」につながるかど
うかは、中教審でかなり議論になりました。その結果、義務教育費国庫負担金
の廃止と、地方の自由の拡大は直接の関係はないと結論づけられています。
 例えば、第41回の義務教育特別部会で、片山委員が、地方の制約は、負担
金制度によるものではないと説明しています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo6/gijiroku/001/05111401/002.pdfの20ページをご覧ください。
また、第52回の中教審総会において、小川委員が「国庫負担制度がある(
=教職員の給与の1/2を国が負担する)ことで、地方による独自な教育のた
めの創意工夫が妨げられているという主張には根拠や論理性がないことは、こ
れまでの議論を通じて明らかになっている」と説明しています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/05102601/004.pdfをご覧ください。
 したがって、国庫負担金の中学校分が廃止されないことを受けて、「教育の
地方分権」が進まないかのような主張を同紙がされているのは、どのような根
拠に基づくものなのか疑問が残ります。中教審答申にあるとおり、義務教育費
国庫負担金を一般財源化して高まる自由とは、義務的経費であるはずの教職員
給与費を“減らす自由”だけです(答申41ページ参照)。毎日新聞は、一般
財源化により、義務教育費を減らすことを主張しておられるのでしょうか。
 なお、同紙の別の記事「三位一体改革 数値目標は達成」(12月1日・朝
刊2面)は政府・与党合意について「来年度以降の削減の可能性もにじませる
あいまいな内容となった」と報じています。これに関しては、小坂文部科学大
臣が、11月30日の記者会見で、今回の措置を「さらに削減されるようなこ
とのない恒久的な意味合いを持つ」と述べています。来年度以降の削減の可能
性は明確に否定されています。

 朝日(12月1日・朝刊3面)の社説は「公約は果たしたけれど」の見出し
で「理念なき迷走を象徴したのが、義務教育費の負担率引き下げだ」「この妥
協案に、分権時代を見据えた教育論が込められているはずもない」としていま
す。
 これについても、中教審において、義務教育費国庫負担金を廃止するかどう
かと、教育の分権化の問題は別であることが明らかになっていることを述べて
おきたいと思います。義務教育費国庫負担金の中学校分を廃止すれば、あたか
も教育の分権化が進むかのような主張は、中教審事務局としてはまことに残念
です。
 なお、朝日(11月30日・朝刊4面)は「義務教育と痛み分け」の見出し
の記事で、「10月末の時点で政府は『8500億円をやるのは規定方針だと
首相も言っている。あとはこちらで判断する』(政府関係者)として、文部科
学省の反発を押し切って地方が求める中学校教職員給与の制度廃止に踏み切る
考えだった」と述べています。同紙の10月27日の夕刊に「義務教育費国庫
負担、中学分廃止へ」との記事が載ったことについて、その日の初中局メルマ
ガで「義務教育国庫負担金に関する朝日新聞の誤報」の見出しで「政府として
決めていないことをあたかも決まったように報道するのはいかがなものでしょ
うか」と述べておきました。同紙の報道は、結果として誤報であったことを報
告しておきます。

 日経(12月2日・朝刊5面)の社説は「第二期の三位一体改革に踏み出せ」
との見出しで、今回の「三位一体の改革」の結論に対する疑問を示しています。
その際、「地方の裁量がより広がるものから順にできるだけ多くの項目の補助
負担金を廃止するのがいい」と指摘しています。
 同紙は、このあと、義務教育費国庫負担金を含む補助負担金の負担率引き下
げに対する批判へと論旨を展開するのですが、実は「地方の裁量が広がるもの
から廃止すべき」という考え方は、中教審答申にも言及されていることを紹介
しておきます。繰り返しになりますが、義務教育費国庫負担金は、義務的経費
である教職員給与費のためのものなので、これを削減・廃止しても、教育費を
減らすほかには、地方の自由度は高まらないというのが中教審の結論です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05102601/all.pdf(中教審答申)

○ 地方の意見に関して、三位一体の改革により地方が真に税源移譲を求めて
 いるのは、配分に当たって国の裁量が大きく地方の主体性を阻害しているも
 の、国の補助基準に合わせるために無駄な事業を招いているもの、国に陳情
 をして配分を求める必要があるものなどであって、教職員給与費のための義
 務的経費である義務教育費国庫負担金のようなものではないとの意見が出さ
 れた。(答申の37ページ)

 こうした議論に関連して、政府・与党合意の直前に、義務教育特別部会の苅
谷委員の論文「答申、分権に逆行せず」が、日経(11月28日・朝刊29面)
に掲載されています。最後にご紹介します。

「大きな誤解が生じるのは、負担金制度が地方の教育の自由度を狭める、文科
 省の規制の最たるものだという間違った印象が持たれていることにある。人
 件費という大枠だけは決めているが、総額裁量制になって以後、現行の負担
 金制度では、それをどのように使うのかの自由度は格段に高まっている。」

「つまり金の出所を国が保障するのが、この制度の趣旨であり、文科省は必要
 な額を各地方団体に支出しなければならない義務を負っているだけだ。陳情
 など必要ない。負担金制度を中央統制の手段に使うことはできないのだ。」

                               
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□ 編集後記

 今回のメルマガは、11月30日にまとまった三位一体の改革についての政
府・与党合意に関する情報を配信しました。
 これまでのメルマガでは、新しい動きがあれば、すぐに臨時増刊号を出して
お知らせしていましたが、この10日間ほど担当課が政府・与党合意の対応に
追われました。そのため、少し遅くなっての配信となりました。なにとぞ、ご
容赦ください。
 ただし、初中局の案件は、それだけではありません。昨日(12月6日)に
は、第2回の「都道府県・指定都市教育委員会教育長会議」が開催され、いろ
いろな議論がなされました。そうした内容も、追ってメルマガでご紹介したい
と思います。      
                  (「初中教育ニュース」編集部一同)
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                      「初中教育ニュース」編集部   
                    TEL 03-5253-4111(内線2007)


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